SaaS は、Software as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の略で、「サース」または「サーズ」と読む。
少し意訳すると「コンピューターソフトをサービスとして利用する」あるいは「サービスとして提供する」といった意味で、クラウドサービスの形態を表す言葉のひとつ。
最初に、パソコンの場合で考えてみよう。まず、パソコン本体、つまりハードウェアがあって、その中に基本ソフト(OS)が入っている。そして、基本ソフトに対応したアプリケーションソフトがあって、それを使って作業する。
業務用の情報システムも同じで、サーバーなどのハードウェアがあって、その中にサーバー用の基本ソフトが入っている。そして、その上で目的別のアプリケーションソフトを動かしている。
従来、業務用のアプリケーションソフトは、独自に開発したり、IT企業に開発を委託したり、ソフト会社から購入したりして、自社のサーバーに入れて使うのが普通だった。
SaaS は、業務用アプリケーションソフトを開発したり、売ったり買ったりするのではなく、必要な期間だけ借りることができるサービス。ソフトを開発した会社が、自社のサーバーにソフトを入れておく。そして顧客(ユーザー)は、インターネット経由でサーバーにアクセスして使う。
といってもイメージしにくいと思うので、グーグル翻訳というサービスを例に考えてみよう。スマホにグーグル翻訳のアプリを入れて起動する。そして、たとえば英文を入れると、すぐに日本語訳が表示される。
しかし、これはスマホの中で翻訳してるわけではない。グーグル翻訳のアプリに入力した英文がグーグルのサーバーに送られて、サーバーの中で翻訳されて手元のスマホに結果が送り返されている。
ここでスマホをパソコンに、グーグルのサーバー内にある翻訳ソフトを会計ソフトに置き換えてみよう。パソコンで会計ソフトの画面を開くと、過去に入力した数字を見ることができる。しかし、そのデータはソフト会社のサーバーの中にある。
新たに数字を追加すると、それが反映されて集計結果も自動的に変わる。しかし、これもサーバーの中で行われている。パソコンの画面には、その結果が表示されているだけだ。
つまり、操作は手元のパソコンで行うけど、実際には IT企業(ソフト会社)が用意したサーバーの中にある業務ソフトが仕事をしている。
SaaS で提供されている主なソフトウェアとして、会計ソフト、営業支援ソフト、顧客管理ソフト、業務用の CAD などがある。SaaS を使うメリットは、新たに開発したり購入すると高額な業務用ソフトも、SaaS なら必要な期間だけ借りて、その分だけ利用料を払えばいい。
ソフトウェアを買わなくて済むだけでなく、サーバーやソフトを維持管理する手間を省くことができる。バージョンアップなども提供者であるソフト会社が行ってくれる。また、そのソフトを利用する人が増えたり減ったりしても柔軟に対応できる。
また今は、個人でも利用できるクラウドサービスが増えていて、これらも SaaS の仲間とされることが多い。たとえば、オフィスソフトやオンラインストレージ、Webメールなどが該当する。個人向けサービスは、無料で利用できるものもある。
なお、SaaS とほぼ同じサービスとして ASP と呼ばれるものがある。これは、Application Service Provider(アプリケーション・サービス・プロバイダー)の略。そして以前は、サーバーに入ったソフトウェアを一時的に借りて使うサービスは「ASP(エイエスピー)」と呼ぶことが多かった。
そして、「SaaS の方が後から出てきたので ASP の使いにくい部分が改善されている。だから別モノ」とされていた時期もある。しかし今は、ASP はサービスを提供している会社やサービス形態を表し、SaaS はサービス自体やソフトウェア自体を指す感じになっている。
さて、最初に戻るけど、業務用のサーバーも、まずハードウェアがあって、その中に基本ソフトが入っていて、その上でアプリケーションソフトを動かしている。そして、この 3つがセットされた状態でサービスが提供されて、アプリケーションソフトを使うのが SaaS だ。
しかし、ハードウェアに基本ソフトを入れた(アプリケーションソフトがない)状態で借りられるサービスもあって、これはPaaS(パース)と呼ばれている。また、ハードウェアだけを借りるサービスは IaaS(イアース)と呼ばれている。それぞれ別のページで解説しているので、必要に応じて参照してほしい。
初稿公開:2006年11月
最終更新:2021年7月
執筆:下島 朗