PaaS は、Platform as a Service(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)の略で、普通は「パース」と読む。大手 IT企業が提供しているクラウドサービスの形態を表す言葉のひとつ。
この言葉を理解するには、まず SaaS(サース)を知ってもらうといい。
パソコンソフトは、最初からパソコンに組み込まれているか、自分で買ったりダウンロードしたりしてインストールして使う。業務用ソフトは、専門業者に依頼して自社のコンピューターに組み込んだり、個別に開発して使うのが普通だった。
しかし今は、IT企業のサーバーの中に業務用のソフトウェアが用意されていて、必要な期間だけインターネットなどの通信回線を通じて使えるサービスが普及している。これを、SaaS という。
しかし業務用ソフトの場合、それぞれの会社が業務に合わせて開発する( IT企業に開発を委託する)ことが多い。一方、SaaS だとソフトウェアの仕様がほぼ決まっている。つまり、自由度が低い。
そこで、業務用のサーバー(ハードウェア)に業務用の基本ソフト(OS)を入れた状態で貸し出すサービスが増えてきた。これが PaaS と呼ばれるもので、PaaS の上で独自の業務用アプリケーションソフトを開発したり、運用(利用)することができる。
実際には、サーバーだけでなくストレージ(業務用の大型記憶装置)や通信機器などのハードウェアがセットになっている。そして、基本ソフトだけでなく、基本ソフトとアプリケーションソフトの中間に入れるミドルウェアやデータベース機能も提供される。
現在、代表的な PaaS として、ネット通販最大手の Amazon(アマゾン)が提供している AWS(Amazon Web Service)、Windows(ウィンドウズ)で知られる Microsoft(マイクロソフト)の Microsoft Azure(アジュール)、検索サービスやスマホ用OS の Android(アンドロイド)で知られる Google(グーグル)の Google Cloud(グーグル・クラウド)などがある。
これらの会社は、一般的なユーザー感覚だとネット通販の会社、Windows(ウィンドウズ)や Officeソフトの会社、検索サービスの会社といったイメージだけど、実はこうした業務用のプラットフォームでも大きなビジネスを行っている。これらの会社がプラットフォーマーと呼ばれる理由のひとつだ。
プラットフォームという言葉も IT業界独特の概念で理解しにくいと思う。身近な例でいうと、スマホの基本ソフトは Android と iOS の 2種類があって、それぞれの基本ソフトに対応したアプリを使う。つまり、基本ソフトは、さまざまなアプリ動かすための基盤、あるいはサービスを利用するための基盤となっている。だから、この状態を英語でプラットフォーム(platform)という。
パソコンの場合、Windows の利用者が圧倒的に多い。そして、大多数のビジネス向けソフトが Windows の上で動く。そのため、パソコンの分野では Windows が主要なプラットフォームといえる。
サーバーの場合、今は基本ソフトとして Windows Server(ウィンドウズ・サーバー)や Linux(リナックス)が多く使われている。したがって、これらが動く状態をプラットフォームという。ただし前述のように、実際にはミドルウェアやデータベースソフトが含まれることが多い。
なお、IT企業やその顧客企業では、基本ソフトやミドルウェアも自分たちの用途に合ったものを選びたいというケースがある。この場合は、ハードウェア(サーバーやストレージ)と通信設備だけを借りることもできる。これは、IaaS(イアース)と呼ばれている。
初稿公開:2009年2月
最終更新:2021年7月
執筆:下島 朗