MU-MIMO は、無線LAN(Wi-Fi)の規格の IEEE802.11ac(Wi-Fi 5)で採用された、同時に複数の機器(子機)と高速通信できる技術。
MU-MIMO は Multi User MIMO(マルチユーザーマイモ)の略で、MIMO(マイモ)は Multi-Input Multi-Output(マルチプル・インプット・マルチプル・アウトプット)の略。
MIMO は、IEEE802.11ac のひとつ前の IEEE802.11n(Wi-Fi 4)で採用された技術で、複数のアンテナを使うことで高速通信を可能にした。
しかし従来の MIMO は、同時に複数の機器と通信することができない。複数の機器と同時接続しているように見えるときも、実際には短い時間で通信する機器を切り替えている。
つまり、子機A に少しデータを送ったら、次に子機B に少しデータを送り、また子機A に少しデータを送るということを繰り返して実質的に同時接続しているような状態をつくっている。そのため、同時に接続する機器が増えると通信速度が下がる。
これに対して MU-MIMO は、最大4台の機器と同時に通信できる。
たとえば家の中で、お父さんがノートパソコンで接続し、お母さんがタブレット端末で接続、子ども 2人がスマートフォンとゲーム機で接続するといった状態で、たまたま同時に通信が発生しても、それぞれの電波が干渉しないように工夫したうえで通信できるようになっている。
実際には、どの機器も常時データを送受信しているわけではない。そのため、家族 4人で無線LAN を使っていても同時に通信が発生する可能性は低い。
しかし今後、家庭内にある電子機器やデジタル家電、各種コントローラーなどがインターネットにつながって自律的に通信するようになると、複数の機器が同時に無線LAN を利用する状況が増えると予想される。
MU-MIMO は、こうした状況に対応できる、そうした状態を先取りした機能といえる。
初稿公開:2014年9月
最終更新:2020年2月
執筆:下島 朗