iDC は、インターネットデータセンター(Internet Data Center)の略で、一般的にはデータセンターと呼ばれている。同じ意味で、IDC と表記することもある。
データセンターは、大量のコンピューターや通信機器が格納された施設で、通常、大手 IT企業が所有して運用管理している。
現在のビジネスに、情報システムは欠かせない。そして、そのためには業務用のコンピューター(サーバー)と通信回線が不可欠だ。Webサイトの運営やオンライン会議、ネット通販といった情報系はもちろん、財務管理や受発注管理といった基幹系のシステムでも同様だ。
かつて、こうした情報システムや通信回線は、それを利用する企業が自前で用意するものだった。しかし今は、クラウド・コンピューティングが普及して、IT企業が用意したサーバーを借りてインターネット経由で利用する方式が広まっている。
また、情報システムに必要なサーバーやソフトウェアを自社所有している場合でも、それらの機器を社内に置くのではなく IT企業が用意した専用の施設に預けてメンテナンスなどを代行してもらうことが多い。これをハウジングという。
一方、IT企業が用意したサーバーをインターネット経由で利用する方式は、ホスティングとかレンタルサーバーと呼ばれている。
ハウジングの場合もホスティング(レンタルサーバー)の場合も、企業にとって大事なデータ(情報)を預かることになる。また、インターネット通販などのビジネスを行っている場合、システムが止まると大きな損害に直結する。
そのため、これらのサーバーは極めて堅牢な専用の建物に収められている。こうした建物を、データセンターという。
建物が丈夫なだけでなく、建設する場所からして災害の少ない場所が選ばれる。通信回線も、大容量で信頼性が高い回線に接続されている。電源も安定していて、かつ予備電源が用意されている。
また、温度や湿度もコンピューターにとって最適な状態が保たれている。人の出入りや、外部からの不正アクセス対策といったセキュリティ面も厳重で安全性が高い。
さらに、データセンターの中でデータを自動的に 2重保存したり、地理的に離れたデータセンターで同じデータを共有したりして、トラブルや災害時があっても運用を止めない、データを喪失しない対策が取られている。
こうした施設を普通の会社が用意するのは難しいし、運用していくには多大な手間とコストがかかる。一方で、インターネット上のデータは増え続けている。そのため、データセンターも増えている。
一般企業にサーバーなどの業務用設備を貸すためのデータセンターだけでなく、大手携帯電話会社などが自社の設備を保管するためのデータセンターもある。特に GAFA などプラットフォーマーと呼ばれる巨大 IT企業は、自社データの保管やサービス提供のために世界中にデータセンターを構築している。
さて、IT業界ではデータセンター(Data Center)を DC と略すことが多い。しかし DC は、直流電源(Direct Current)、ドメインコントローラ、データコミュニケーションなどの略としても使われている。
そのため、データセンターのインターネット接続機能に着目してインターネットデータセンター(Internet Data Center)と呼び、iDC または IDC と表記することも多い。
初稿公開:2000年4月
最終更新:2021年2月
執筆:下島 朗