電力小売自由化とは、大手電力会社だけでなく、さまざまな事業者から電気を買えるようにすること。日本では、2016年4月から完全に自由化された。
従来、日本には 10 の電力会社があって、それぞれ地域ごとに発電、送配電、小売りを独占してきた。しかし、1995年に発電事業の自由化が始まって、電力会社以外の事業者が発電事業を行ったり、再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、など)から作った電気を電力会社に売ったりできるようになってきた。
電力事業には、発電の他にも電気を利用者(企業、店舗、工場、家庭、など)へ届ける送配電と、料金体系を決めたり契約手続きをしたり使用料の請求や徴収を行う小売部門がある。
このうち、小売部門に一般企業や事業者が参入できるようにしたのが電力の小売自由化と呼ばれるもの。
まず、2000年3月に「特別高圧」という契約の自由化が始まった。特別高圧は、大きな工場や商業ビルなど電気を大量に使う事業所向けの契約方式。そのため、対象は一部に限られる。
2004年4月と 2005年4月には、「高圧」と呼ばれる契約が小売自由化の対象になった。これによって、中小規模の工場やオフィスビルなども契約先を選べるようになった。
そして 2016年4月、「低圧」と呼ばれる契約も自由化がスタート。一般家庭や商店などすべての電気使用者が契約先を選べるようになった。そのため、これを電気の小売全面自由化ということもある。
全面自由化で、さまざまな企業や事業者が新たに電気の小売りに参入した。ガスや石油といった大手エネルギー会社や再生可能エネルギーの普及拡大を目指すベンチャー企業だけでなく、プロパンガス販売会社など地元密着の中小企業、携帯電話など異分野の事業者、さらに自治体の参入もあった。
なお、こうした新規事業者から電気を購入しても、送電網は既存の電力会社の設備を使うので電気の質が下がることはない。また、事業トラブル等で小売業務が中断・停止しても、各地域の大手電力会社が電気を供給してくれるので停電の心配もない。
初稿公開:2016年10月
最終更新:2019年5月
執筆:下島 朗