送電ロスとは、発電所で作られた電気が利用者、つまり事業所や家庭に届くまでに目減りすること。または、減ってしまう電気量。同じ意味で、送電損失、送電力損失、送配電損失ということもある。
送電ロスが生じるのは、送電線に電気抵抗があるため。そして、電気を送る距離が長くなるほど送電ロスが大きくなる。送電ロスを減らすには、電圧を上げる、電気抵抗の少ない送電ケーブルを使うといった方法がある。
こうしたこともあって、発電所から送り出される電圧は、最大50万ボルトという超高電圧になっている。これを太い送電線で変電所へ送り、複数の変電所で段階的に電圧を下げていく。
大きな工場や商業施設では、途中段階の電圧が高い電気を引き込んで、工場や施設内の変電設備で電圧を下げている。家庭用の電気は、最終的に電柱の上で100ボルトまたは200ボルトに下げて配電される。電圧が下がると送電ロスが増えるので、なるべく利用者に近いところで電圧を下げるしくみになっている。
また、さらに送電ロスを減らすため、発電所から送り出す電圧を100万ボルトまで上げたり、電気抵抗の少ない超電導ケーブルを実用化する研究も進められている。
2000年以降、日本の送電ロスは概ね 5%弱とされている。昭和の高度成長期には 20%を超えていたので大幅に減った。
それでも 5%の損失は、原子力発電所あるいは火力発電所 10基分の発電量に近いとされている。今後、さらに送電ロスを減らすことができれば、大規模な発電所が何基も不要になる計算だ。
初稿公開:2018年9月
最終更新:2019年5月
執筆:下島 朗