第5世代移動通信システムとは、2020年3月に始まった携帯電話などの通信サービスを指す言葉。第5世代を英語で 5th Generation といって、これを略して 5G(ファイブジー)という。
移動通信システムは、移動しながら使える通信サービスの総称。
現在のような携帯電話(スマートフォン)だけでなく、携帯電話の元になった自動車電話、一時期人気があった PHS、モバイルWiMAX(ワイマックス)、IoT(モノのインターネット)と呼ばれる機器同士の通信も含まれる。
移動通信システム(主に携帯電話サービス)は、おおむね 10年ごとに新しい世代へと移行してきた。
1980年代の第1世代移動通信システム(1G)は自動車電話と初期の携帯電話の時代で、アナログ方式で音声通話が提供されていた。
その後、1993年にデジタル方式の携帯電話サービスが登場して、ここから第2世代移動通信システム(2G)が始まった。そして、メールなどのデータ通信が可能になってきた。
2001年に、IMT-2000 という規格に対応した新しい携帯電話サービスが始まって、ここから第3世代移動通信システム(3G)がスタートした。第3世代では、データ通信が実用的な速度になった。
その結果、画像や音楽の送受信、Webサイトの表示などに十分対応できるようになった。
その後、第3.5世代とか第3.9世代といわれる時期を経て、2010年代の半ばから第4世代移動通信システム(4G)がスタートした。
第4世代では、当初は第3.9世代とされていた LTE や、LTE を進化させた LTE-Advanced(LTEアドバンスト)といった技術が普及した。その結果、データ通信の速度が有線のインターネット並みに高速化して、映像などの大容量コンテンツをスムーズに配信できるようになった。
これに続く第5世代移動通信システムは、当初の通信速度が下り最大2~4Gbpsくらい(キャリアによって異なる)。最終的には、10Gbps まで高速化する見込み。また、通信網全体で扱える情報量が増えて、通信の遅延が少なくなる。
第3世代や第4世代は、それぞれの端末(スマートフォン)で、データ通信が「これだけ速くなります」という感じの進化だった。第5世代でも通信速度が大幅に上がる。しかし、それだけではない。
通信網の容量が増えつつ通信速度が上がることで、人が密集した場所(大都市の駅前やスタジアムなど)で、たくさんの人が同時に大容量のデータ通信を行っても十分に対応できるようになる。
また、IoT(モノのインターネット)の普及が加速して、スマートフォン等を使った人と人との通信だけでなく、機器と機器との通信が今後ますます増えていく。こうした用途にも、第5世代の技術と設備で対応していく。
さらに、通信の遅れを極力減らして、自動運転や遠隔医療にも対応していく。こうした分野では、わずかな遅れが大きな事故につながりかねない。そのため、遅延のない安定した通信がとても大事だ。
第5世代では、以上のような使い方に対応していくために、さまざまな技術が追加されていく。
たとえば、マッシブMIMO(マイモ)という技術がある。ひとつの基地局に 100以上のアンテナを設置して、複数のアンテナから 1台の端末に向けて電波を送ることで通信速度を上げたり、電波の利用効率を高めることができる。
なお、第5世代以外については、下記のリンクから参照してほしい。
第1世代移動通信システム (1G)
第2世代移動通信システム (2G)
第2.5世代移動通信システム (2.5G)
第3世代移動通信システム (3G)
第3.5世代移動通信システム (3.5G)
第3.9世代移動通信システム (3.9G)
第4世代移動通信システム( 4G)
第5世代移動通信システム (5G)
第6世代移動通信システム (6G)
初稿公開:2016年7月
最終更新:2020年4月
執筆:下島 朗