発送電分離とは、電力会社の発電事業と送配電事業を切り離すこと。つまり、「発電と送電の分離」という意味。
従来、日本には 10 の電力会社があって、それぞれ地域ごとに発電、送電、小売りを独占してきた。発電事業は多大な先行投資が必要で社会的責任も大きい。そのため、かつてはこうした方式にメリットがあった。
しかし社会の成熟や事業環境の変化にともなって、事業独占のデメリットが指摘されるようになってきた。代表的なのは、電気料金が高いのは電力会社が地域ごとに事業を独占しているから、といった意見。
さらに、再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、など)の普及に伴って、電気の買取制度などが注目されるようになってきた。しかし買い取られた電気は、それぞれの地域の電力会社の送電網で利用者の元へ送るしかない。
そこで、まず既存の大手電力会社の発電事業と送配電事業を分離させる。そして、より多くの事業者が発電に参入して、その電気をいろいろな事業者が販売できるようにしよう。そうすれば競争の原理が働く、というのが発送電分離の主たる意図だ。
とはいえ、欧米では 1990年代に発送電分離が実施されたものの、結果的に電気代が上がったという報告が多い。
それでも、日本でも 1995年に発電事業の自由化が、2000年には小売り事業の一部自由化が行われ、段階的に電気事業の自由化が進んできた。そして、2016年4月から電力の小売りが全面自由化されて、さまざまな業種から新規参入があった。
初稿公開:2016年5月
最終更新:2019年5月
執筆:下島 朗