燃料電池とは、英語の Fuel Cell(フューエル・セル)を日本語化した言葉で、水素と酸素を反応させて発電する装置。実際には、一酸化炭素を燃料にするものなど複数の方式がある。しかし、今もっとも期待されているのが水素を燃料にする方式だ。
電池というと、乾電池のように使いきりのタイプ(一次電池)や、バッテリーのように繰り返し充電できるタイプ(二次電池)を思い浮かべる人が多いと思う。しかし燃料電池は、これらの電池と違って、その場で電気をつくる。
燃料電池は、2016年現在すでに普及が始まっていて、主に家庭用の省エネ・発電装置(エネファーム)、燃料電池自動車(FCV)、燃料電池システムを搭載した電気製品などがある。
燃料電池のしくみを説明する際に、よく使われるのが小学校の理科の実験で行った水の電気分解の話で、水に電気を加えて水素と酸素に分ける。逆さにした試験管に泡が溜まり、最後にそれをポンと燃やしたのを覚えている人も多いだろう。
燃料電池はこの逆で、水素と酸素を反応させて水に戻す。その際に、電気を取り出すことができる。石油やガスを燃やすわけではないので、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが発生しない。出るのは、水だけ。そのため、環境にいいとされている。
ただし今のところ、燃料となる水素を都市ガスやエタノールから作る際に電気を使ったり、温室効果ガスが発生したりするので、完全にクリーンな電源とはいい切れない。また、燃料電池自動車を普及させるには、水素の充填が可能な水素ステーションを街中に増やしていく必要がある。
とはいえ燃料電池は、電気を使う場所で発電するので送電ロスが少ない。また、家庭用エネファームは発電で発生した熱を暖房などに使えるのでエネルギー効率がいい、といったメリットがある。
初稿公開:2016年5月
最終更新:2019年5月
執筆:下島 朗