時分割多重化は、1本の通信線や 1種類の電波で同時に複数の通信を行うとき使われる技術のひとつ。
英語では Time Division Multiplexing(タイム・ディビジョン・マルチプレクシング)といって、TDM と略すことが多い。最後の単語を Multiplex(マルチプレックス)にして、「時分割多重」ということもある。
1本の通信線や 1種類の電波で同時に複数のデータを送る方法はいくつかあって、時分割多重化もその中のひとつ。簡単にいうと、短い時間ごとに区切って交代で通信を行う。
例えていうと、今ここに 3人の営業マンがいて、同時に会社に連絡したいとする。しかし、使える電話機が 1台しかない。そこで、まず Aさんが 1分話して、次に Bさんが 1分話す。最後に Cさんが 1分話す。また Aさんに戻って先ほどの続きを 1分話して、次に Bさんが 1分話して、Cさんが 1分話す。
これを繰り返すことで、3人が同時に電話している状態をつくることができる。これが TDM=時分割多重化の原理。つまり、時間を分割することで同時進行の通信を実現している。
もちろん、この例では、かえって話が伝わりにくくなってしまう。しかし、現在はデジタル方式の通信が主流なのでデータをブツ切りにしやすい。元に戻すのも簡単だ。
また、実際には非常に短い時間で切り替えて行くので実質的に同時進行でデータが送られているように見える(あるいは聞こえる)。ただし、同時に通信する数が増えると、それぞれの通信速度は遅くなる。
なお、一定に区切られた時間をフレームといって、さらにフレームを区切って各通信機器に割り当てる。これをチャネルという。そして、各チャネルに割り当てられた 1回の通信時間をタイムスロットという。
この技術を使って同時に複数の機器を接続することを TDMA(時分割多元接続)という。
TDM(時分割多重化)のほかに、代表的な多重化の方法として複数の周波数を重ねて送る FDM(周波数分割多重化)という技術がある。
初稿公開:2016年8月
最終更新:2020年2月
執筆:下島 朗