地中熱利用とは、地中の温度が年間を通じてほぼ一定なことに着目して、その熱を冷暖房などに使うこと。
地表の温度は夏と冬で大きく変わる。東京近辺の目安として、夏は30度近くまで上がり、冬は0度近くまで下がる。しかし、地下10~15メートルくらいになると、一年を通して15度くらいで安定している。
もちろん、九州や北海道では地中の温度も異なる。しかし、日本では10度から20度くらいの範囲に収まる。そのため全国どこでも、地下10メートルの地中温度と外気温は、夏も冬も15度くらいの差がある。
そこで、地中に向けて縦に深くパイプを設置して、空気を循環させる。すると、夏は熱い空気が冷たくなって戻ってくるので冷房に利用できる。冬は、冷たい空気が暖かくなって戻ってくるので暖房に利用できる。
空気の代わりに不凍液などを循環させることで、道路の融雪設備に使ったり、温水プールの水を温めるといった使い方もある。
空気や水の循環にポンプを使っても、通常の冷暖房よりは消費電力が少なくて済む。また、自然に空気が循環する仕組みをつくることで、電気を使わずに快適な住環境を実現している住宅もある。
こうしたことから、地中熱利用も再生可能エネルギーの一種として語られることがある。ただし正確には、電力を生み出すのではなく電気の消費を減らすので、省エネ技術として捉えるほうが適切だろう。
なお、再生可能エネルギーのひとつに地熱発電がある。これは、火山や温泉など、地中にある高温の熱エネルギーを使って発電する。そのため、地中熱利用とは区別されている。
初稿公開:2018年3月
最終更新:2019年5月
執筆:下島 朗