IT の世界で「ワン」というと、遠く離れた場所にある LAN と LAN を相互接続して、あたかもひとつの LAN のようにしたコンピューターネットワークを指す。
こうしたコンピューターネットワークを、Wide Area Network(ワイドエリア・ネットワーク)といって、これを略して WAN(ワン)という。
LANハ(ラン)は、Local Area Network(ローカルエリア・ネットワーク)の略で、企業(オフィス)や大学など、一定の場所にある複数のコンピュータを相互接続したコンピューターネットワーク。
現在は、電波でデータを送受信する無線LAN も普及している。しかし、従来の LAN は LANケーブルを使って物理的に接続するのが基本だった。この接続には Ethernet(イーサネット)という技術が使われている。そして、Ethernet の制約で長距離の通信には対応できない。
そのため、企業の本社と支社、大学の本校と分校を相互接続したいといった場合は、まずそれぞれの拠点ごとに LAN を組む。そして、IT企業が提供している通信回線で双方の LAN をつないでデータやメールなどの送受信を可能にする。
従来、こうした接続には専用線と呼ばれる業務用の通信回線を使うのが普通だった。この回線は、他者が入り込むことができないので機密データも安心して送ることができる。ただし、かなり費用がかかる。
そこで今は、VPN と呼ばれる仮想的な通信回線を使うことが多い。これは、送受信するデータを暗号化することによってインターネットや IP回線で安全にデータを送る技術。あるいは、長距離通信が可能な広域イーサネットという方式を使うこともある。
なお最近は、より幅広い意味で WAN という言葉が使われるようになっている。具体的には、インターネットを通じてさまざまなコンピューターネットワークがつながっている状態を WAN ということが増えてきた。
たとえば、インターネットを利用する際は ISP(いわゆるプロバイダー)を通じてインターネットにつなぐのが一般的。そして、それぞれの ISP が通信回線で接続されているので、これも WAN という認識だ。
そのため今は、市販のルーターや無線LANのアクセスポイントのインターネット側の接続口に WAN と書かれていることが多い。
初稿公開:2000年10月
最終更新:2020年1月
執筆:下島 朗