ライフサイクルアセスメントは、英語で Life Cycle Assessment と書いて LCA と略すことが多い。ライフサイクルは「一生涯の」といった意味で、アセスメントは「環境への影響を評価(算定)する」といった意味。
といっても、これは人間の一生に関する話ではなく、主に工業製品の一生(生産から廃棄まで)に係わる考え方。
工業製品を作るには、まず原材料が必要になる。金属は鉱山で採掘されるし、プラスチックは石油から作られる。それを工場に運んで、部品や製品に加工される。その際、電気や水を使う。
次に、販売店などを通じて消費者の元に届けられ、使われる。そして、役割を終えると廃棄される。材料や製品の輸送にトラックを使えば排気ガスがでる。
つまり、それぞれの段階で何かしら環境に影響がある。現在は、二酸化炭素(CO2)の排出量が基準になることが多いけど、それだけに限らない。フロンガスも問題だったし、大気汚染物質の排出や水質汚染なども環境評価の対象になる。
原材料の調達から使用後の廃棄まで、製品の一生(ライフサイクル)を通して環境への影響を考えましょう、というのがライフサイクルアセスメントだ。
使っているときは環境への影響が小さくくても、それが良い製品とは限らない。製造段階で大量の汚染水を出したり、最後に処分するとき汚染物質が出る製品は、ライフサイクルアセスメントの観点で見ると環境負荷が大きいことになる。
たとえば、衣料品などの繊維産業は生産段階で大量の水を使う。そして、製造時や使用後に生地の廃棄量が多い。そのため最近は、大量生産・大量販売で事業を回しているファストファッションは環境への影響が大きい産業といわれている。
エコといわれる製品も、ライフサイクルアセスメントの基準で評価すると見え方が変わってくる。
太陽光パネルは、再生可能エネルギーを生み出すエコ製品と認識されている。しかし、製造段階や廃棄処分の際に環境への影響が大きいといわれる。改善していく余地があるだろう。
あるいは、電気自動車(EV)。走行中は二酸化炭素も大気汚染物質も出さない。そのためクリーンで環境にいいとされている。しかし、今の日本は火力発電の比率が高く、電気を作る段階で大量の二酸化炭素を出している。また、バッテリーも現状では環境負荷が大きい。
ライフサイクルアセスメントを意識するとこで、何が本当に環境にやさしいのか、どこに改善点があるのか見えてくる。
最終更新:2021年1月
執筆:下島 朗