マルチクラウドの「クラウド」は、クラウド・コンピューティングという意味。そして、複数のクラウドサービスを組み合わせて使うことをマルチクラウドという。
クラウド・コンピューティングは、IT企業が用意したサーバーやストレージ(記憶装置)、通信設備、ソフトウェアなどを月単位や年単位で借りて使うこと。
ユーザーは、手元のパソコンなどからインターネット経由でクラウドのサーバー等にアクセスして設備やソフトウェアを利用する。主に企業向けのサービスだけど、今は個人で使えるサービスも多い。
実際には、サーバーやストレージ、通信設備、ソフトウェアなどは、データセンターと呼ばれる専用の施設(建物)に納められている。データセンターは、建物が丈夫で安全性が高く、バックアップ電源などの設備も整っている。また、人の入退出も厳しく管理されている。
そして、一般的なクラウドサービス(パブリッククラウド)だと、同じデータセンターの中にあるサーバー等の設備を複数のユーザー(企業)が共有している。もちろん、他のユーザーが使用してる領域には入れないし、データを見ることもできない。セキュリティは守られている。
そして今は、クラウドで提供されているサーバーやソフトウェアも、いろいろな種類があって使用目的に応じて選ぶことができる。一般的な業務システムに適合したサーバーやソフトウェアだけでなく、システム開発に向いたもの、Webサイトの運用に向いたもの、AI や IoT に対応したものなどがある。また、価格やサービス内容にも差がある。
そのため、目的に応じて複数のクラウドサービスを使い分けるケースが増えている。そして、この状態をマルチクラウドという。
たとえば個人でも、パソコンのデータはマイクロソフトのOneDrive に保存して、iPhone のデータは iCloud にバックアップ、Webメールは Google の Gmail といった感じで複数のクラウドサービスを使っているケースが多いと思う。企業の場合も、ひとつのクラウドサービスに絞るのは難しい。
なお、大手企業では自社でデータセンターを構築して自社専用のクラウドサービスを運用していることがある。これは、プライベートクラウドと呼ばれている。
そして、プライベートクラウドと一般的なクラウドサービスを区別するために、IT企業が提供している従来型のクラウドサービスをパブリッククラウドと呼ぶようになった。また、プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせて使うことをハイブリッドクラウドという。
マルチクラウドは、複数のパブリッククラウドを組み合わせて使うという意味で、ハイブリッドクラウドとは異なる。
初稿公開:2015年1月
最終更新:2021年8月
執筆:下島 朗