プライベートクラウドの「クラウド」は、クラウド・コンピューティングという意味。そして、大手企業が自社で使うために構築したクラウドをプライベートクラウドという。
本来のクラウド・コンピューティングは、IT企業が用意したサーバーやストレージ(記憶装置)、通信設備、ソフトウェアなどを月単位や年単位で借りて使うこと。
ユーザーは、手元のパソコンなどからインターネット経由でクラウドのサーバー等にアクセスして設備やソフトウェアを利用する。主に企業向けのサービスだけど、今は個人で使えるサービスも多い。
実際には、サーバーやストレージ、通信設備、ソフトウェアなどは、データセンターと呼ばれる専用の施設(建物)に納められている。データセンターは、建物が丈夫で安全性が高く、バックアップ電源などの設備も整っている。また、人の入退出も厳しく管理されている。
ただし、一般的なクラウドサービスだと、同じデータセンターの中にあるサーバー等の設備を複数のユーザー(企業)が共有している。例えていうと、大きな雑居ビルのような感じ。
もちろんデータセンターの場合、他のユーザーが使用してる領域には入れないし、データを見ることもできない。セキュリティは守られている。メンテナンス等は運営会社が行ってくれるし、自社で設備を持つより低コスト。そして、不要になったら契約を解除すればいい。
とはいえ、デメリットもある。セキュリティ対策が万全とはいえ、不正アクセス等のリスクを完全にゼロにすることはできない。また、設備にトラブルがあると、ユーザー企業にも影響が及ぶ。そして、自社の使い方に合わせてカスタマイズするのが難しい。あるいは、カスタマイズできる範囲が限られる。
そこで大手企業では、独自にデータセンターを作って自社だけ、あるいは自社と関連企業だけで利用するケースが増えてきた。そして、これをプライベートクラウドといって、従来のクラウドとは区別するようになった。
プライベートクラウドを構築するメリットは、まず外部からの不正アクセス等のリスクを減らすことができる。自社で管理するので、メンテンナンスやトラブル対応も自社の都合に合わせやすい。そして何より、自社にとって使いやすい設備やシステムを構築できる。
一方で、大きな設備を所有するため初期費用が大きい。そして、機器の入れ替えやソフトウェアのバージョンアップといったメンテナンスに手間と費用がかかる。相応の規模の会社でないと運用は難しい。
なお、こうした流れに対して、従来の複数のユーザーが共有する方式のデータセンター(その中の設備やソフトウェア)をパブリッククラウドと呼ぶことが増えている。
また、プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせて使うことをハイブリッドクラウドという。
初稿公開:2009年9月
最終更新:2021年8月
執筆:下島 朗