スマートグリッドとは、電気の送電網と IT(情報通信技術)を組み合わせることで、社会全体でより効率よく安定的に電気を使って行こうという構想。スマート(smart)は「賢い」といった意味で、この場合のグリッドは送電網のこと。
アメリカや日本で関心が高まっていて、多くの企業が大きなビジネスチャンスとして捉えている。しかし、スケールの大きな話なので全体をイメージしにくい。そこで、次の 3段階で理解するといいと思う。
1.従来の発電事業は、需要のピークを予測して、それに合わせて発電所の設備を用意していた。そのため常に、需要を上回る設備が必要だった。
スマートグリッドが実現して行くと、各家庭やオフィス、工場などにスマートメーターと呼ばれる通信機能を持ったメーターが設置されるようになって、リアルタイムで電力需要を把握できるようになる。これによって、より効率的な設備計画と実際の需要に合った発電が可能になる。
2.今後は、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー(自然エネルギー)の比率が上がるとされている。しかし、こうしたエネルギーは天候などによって発電量が変化する。
スマートグリッドが実現すれば、再生可能エネルギーで作られた電気の量もリアルタイムで把握できるようになる。そして、こうした情報を勘案して発電量を適切に制御すれば、電気を安定的に供給できるだけでなく火力発電による二酸化炭素(CO2)の排出を減らすことができる。
3.さらに、たとえば昼間、太陽光発電でつくった電気を家庭用の充電池や電気自動車のバッテリーに溜めて夜間に使う。停電時や災害時には、こうした身近な場所にある電気を使ったり融通したりできるようにする。
こうしたことを段階的に実現することで、社会全体で電気の使用効率を上げて行く、より安定的に電気を使えるようにしていく。それが、スマートグリッド構想の目指すところ。
初稿公開:2016年4月
最終更新:2019年5月
執筆:下島 朗