サーマルリサイクルとは、主にプラスチックのゴミを燃料として燃やし、その熱を利用すること。サーマル(thermal)は「熱の」という意味で、ゴミから熱エネルギーを取り出すので「熱回収」ということもある。
具体的には、回収した熱を発電やゴミ処理施設周辺の建物の暖房などに使っている。単に焼却するのではなく、一度使ってゴミになったプラスチックを燃料として再利用しているので、これもリサイクルという考え方だ。
多くの人がイメージするリサイクルは、回収した資源ゴミから、また同じ製品を作ることだと思う。鉄やアルミといった金属、紙などはこうしたリサイクルが行われていて、これをマテリアルリサイクルという。
しかし、プラスチックはマテリアルリサイクルが難しい。まず、ものすごく種類が多くて分別が難しい。たとえば、一般にビニール袋と呼ばれているお菓子などが入った袋は、実際にはポリエチレンが多くてビニールは使われていない。
家電製品やデジタル機器などは、ひとつの製品に種類が違う複数のプラスチックが使われていることが少なくない。これを正しく分類しないと、マテリアルリサイクルはできない。
また、プラスチックは溶かして同じ製品にすると元の状態より弱くなることが多い。食品の梱包に使われていたプラスチックは、洗っても不純物が混ざるので衛生面などの理由から再利用が難しい。
そのため、ペットボトルなど一部のプラスチックは科学的な処理で油のレベルまで戻して再利用している。これを、ケミカルリサイクルという。しかし、ケミカルリサイクルは大掛かりな設備が必要で手間もかかるので、あまり比率が高くない。
そのため、実際には第3 の方法として、プラスチックのゴミを燃料として使うという選択がされている。
自治体で「廃プラ」として回収されているビニール袋(実際は、ポリ袋)や食品トレーなどの梱包材は、ほとんどサーマルリサイクルされていると思っていい。これなら、種類が違うプラスチックが混ざっていたり、食品などの汚れが残っていても大丈夫。
プラスチックは元々石油なので、よく燃える。つまり、たくさん熱が出る。むしろ高温になり過ぎて、以前は焼却炉を傷めるといわれた。しかし、今は高温に耐えられるように炉が改良されている。また、プラスチックを燃やすとダイオキシンが出るともいわれたけど、これも高温でよく燃やすことで概ね解決されている。
実際のところ、日本はサーマルリサイクルの比率が高い。しかし、欧米では「リサイクル」といえばマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを指して、サーマルリサイクルはリサイクルとされていない。
日本は、プラスチックのリサイクル率が高いとされている。しかし、実際に多いのはサーマルリサイクルで、その分を外すと実はあまり高くない。
最終更新:2021年4月
執筆:下島 朗