クラウド(cloud)は本来、「雲」という意味。IT の分野で「クラウド」というと、実質的にインターネットを指すことが多い。あるいは、インターネットを使った各種サービスを「クラウド〇〇」といったりする。
一時、インターネットを使ったサービスの概念図を描くとき、インターネットを雲の絵で表現することが多かった。
今やインターネットは、非常に複雑で捉えどころのない巨大な通信網になっている。そのため、漠然とした雲の絵で表現されていた。ここから、クラウドという呼び方が始まったとされる。
当初は、インターネット上に用意されたサーバーやストレージ(記憶装置)、業務用のソフトウェアなどを使うクラウド・コンピューティングが主流だった。クラウド・コンピューティングについては別のページでも解説しているので、必要に応じて参照してほしい。
かつては、インターネットでデータを送受信するとき、相手のサーバーや端末(パソコン)、ストレージなどがどこにあるか、おおむね把握できた。たとえば大学のホームページなら、その大学に設置されたサーバーの中にデータがあるのが普通だった。
しかしクラウドだと、サーバーやソフトウェアはもちろん、使用中のデータや自分が保存したデータが地球上のどこにあるか分からない。また、それを意識する必要もない。その結果、インターネットはますます雲のように捉えどころのない存在になった。
さらに、インターネットを使ったさまざまな新サービスが登場して、これらをクラウドサービスと呼ぶことが一般化してきた。もちろん、そのサービスを提供しているサーバーがどこにあるか利用者には分からない。
なお、インターネット上では「雲」のほかに「群衆」という意味でも「クラウド」という言葉が使われている。「群衆」の方は、英語で書くと crowd で、カタカナでは同じ表記になるものの意味が違う。
「群衆」の方の例としては、インターネットで資金を集めるクラウドファンディング(crowdfunding)や、個人で仕事を請け負う人と、その能力を必要とする人を引き合わせるクラウドソーシング(crowdsourcing)などがある。
初稿公開:2008年3月
最終更新:2020年4月
執筆:下島 朗