IT の分野では、自社で通信回線や通信設備を持っている大手携帯電話会社をキャリアということが多い。MNO(移動体通信事業者)と呼ばれる、NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクモバイルといった会社だ。
より正確には、自社で通信設備を持っている第一種電気通信事業者のことをキャリアという。具体的には、大手携帯電話会社だけでなく、NTT や KDDI といった通信会社、CATV(ケーブルテレビ)の会社などが含まれる。
通信事業を行っている会社の中には、自社では通信設備を持っていない、他社から設備を借りて通信サービスを提供している会社がある。こうした会社は、第二種電気通信事業者という。
携帯電話の分野では、一般に格安スマホとか格安SIM と呼ばれる会社が第二種電気通信事業者に該当し、これらはキャリアではない。
最近は、大手通信事業者同士が国境を越えて合併や業務提携し、世界規模で総合的な通信事業を行う動きがある。こうした巨大通信事業者をメガキャリアと呼ぶこともある。
実は、キャリア(carrier)という言葉は、IT以外の分野でも、いろいろな意味で幅広く使われている。
本来は「運ぶ」という意味のキャリー(carry)に「er」を付けたもので、辞書を引くと「運送人」「配達人」「荷台」「運搬装置」といった意味が出てくる。「航空母艦」や「病原菌の保有者」といった意味もある。
なお、仕事の経歴や専門性の高い職業に対して「キャリア」という言葉を使うことも多い。また、国家公務員I種試験に合格して中央省庁で働く人を「キャリア組」といったりする。
こうした職業にかかわる「キャリア」は career と表記する。最初に説明した「通信事業者」や「運搬人」といった意味の carrier とは別の単語なので気をつけよう。
初稿公開:1999年6月
最終更新:2020年4月
執筆:下島 朗