インターネットは、世界に広がった巨大な通信インフラ
現在、インターネット(Internet)は空気のように当たり前の存在になっているし、とても規模が大きくて機能も多様化している。そのため、人によって使い方が違うしインターネットの捉え方もさまざま。
しかし、インターネットとは何かと問われたら、「世界中のコンピューターネットワークを同じルールで相互接続したネットワークのネットワークで、世界中に広がった巨大な通信インフラ」というのが基本的な定義だと思う。インフラは、インフラストラクチャー(infrastructure)の略。
たとえば、企業や大学の中には、LAN と呼ばれるコンピューターネットワークが構築されている。そして、LAN に接続されたパソコンで他の会社の Webサイトを見たり、他の会社に電子メールを送ることができる。これは、それぞれの会社の LAN がインターネットに接続されていて、相手の会社の LAN もインターネットに接続されているから。
今は、スマートフォンでインターネットを利用する人が多い。これができるのも、NTTドコモや au などの携帯電話会社が、それぞれネットワーク(通信網)を構築していて、さらにそれがインターネットにも接続されているから。
つまり、いろいろな会社や大学や公的機関などが個々に作ったコンピューターネットワークが相互接続されている。そして、自由に通信できる状態がインターネットの本質だと思う。
マスクメロンを思い浮かべると、イメージしやすいかもしれない。丸くて緑色のメロンの実が地球。その周り覆っている白い網目状の筋がインターネットの通信網。地球には海があるじゃないか、と言われそうだけど、実は海の底にもたくさんの通信回線が敷設されている。
インターネットの歴史
現在のようなコンピューターが研究機関や大学で使われるようになったのは 1960年代だった。現在のような、とはいっても、基本的な原理が同じという意味。当時のコンピューターは真空管を使った巨大な装置で、今とは比べ物にならないほど性能が低かった。そして、一部の研究者しか使えない特別なものだった。
しかし当時から、離れた場所にあるコンピューターを使いたい、離れた場所にあるコンピューターとデータを交換したい、つまり通信したいという要望があって、そのための研究開発が行われていた。
そして 1969年、アメリカ西部の大学と研究所、計4ヵ所を相互接続して ARPANET(アーパネット)というコンピューターネットワークが作られた。これが、インターネットの原点とされている。
その後、接続するコンピューターが増えていって、大学や研究機関だけでなく政府機関、軍事基地、大企業の研究部門なども接続されるようになった。とはいえ、当時はまだインターネットを使える人はもちろん、その存在を知っている人も限られていた。
1990年代の半ばに、一般企業や個人でもインターネットを使えるようになった。これをきっかけにインターネットを使う人が急速に増えはじめ、通信技術やサービス内容がどんどん発展していった。一般の会社がホームページを作りはじめたのも、このころだった。
2000年代になると、携帯電話からのインターネット利用も増えて、ネット通販などのサービスが実用レベルになってきた。2010年代になるとスマートフォンからの利用が増えて、音楽や動画の配信サービスも普及した。
今後は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)が、ますます広がっていくと考えられている。これまでは、パソコンやスマホの画面を見ながら人間が操作して利用するのが普通だった。しかし、これからは機器と機器がインターネットを通じて自動的にデータを送受信するといった使い方のほうが増えていく。
インターネットの機能
現在、インターネットの機能というと、ほぼ Webサイトと電子メールに集約されている。企業などのホームページも、検索サービスも、ネット通販も、SNS も、WWW(World Wide Web:ワールド・ワイド・ウェブ)という技術をベースに構築されていて、どれも Webサイトの仲間になる。
しかし昔は、遠くのコンピューターの中にある情報を見たり、文字だけで意見交換をしたり、電子メールの添付ファイルとは異なる方法でファイルを送るなど、さまざまな機能が個別に存在していた。
フォイル転送の機能は FTP(エフティーピー)と呼ばれ、今でも使われることがある。とはいえ、今はどれも Webサイト上で可能なので、こうした古い技術が使われることはほとんどなくなった。
インターネットの発展を支えてきた技術と文化
まず、最初の段階でパケット通信と呼ばれる方式が採用されたことが大きい。これは、データを細切れにして、網の目状に張り巡らされた通信回線を細切れデータが自在に流れていく方式で、現在も同じ方式が使われている。
次に、通信方式が統一されていること。初期の ARPANET は今とは異なる方式が使われていたものの、1980年代の前半には TCP/IP と呼ばれる通信ルールが採用されて、現在も基本的にこの方式が使われている。そのため、種類が違うコンピューターや機器でも TCP/IP に対応していれば通信できる。
そしてインターネットには、全体を独占的に管理する組織がない。たとえば、アメリカ政府や特定の IT企業が管理していて、その許可がないと接続できないといった縛りがない。インターネットの共通ルールを守れば、誰でも接続して利用することができる。
さらに、基本的に無料で使える。パソコンやスマホといった機器が必要だし、プロバイダー(ISP)や携帯電話会社に利用料を払っている。しかし、これは自分がインターネットに接続する(参加する)ためのコスト。インターネットそのものの利用料は徴収されていない。
また当初から、プログラムやコンテンツを無料で公開してみんなで共有しようという文化がある。そのため今も、多くの機能や情報を無料あるいは低価格で利用できる。
インターネット分断化への懸念
冒頭で書いたように、インターネットは「世界中に広がったコンピューターネットワークのネットワーク」というのが基本。しかし、2010年代になると、そうとは言い切れない状況が生じてきた。
一部の国や地域で、海外発のインターネットサービスを利用できないように制限したり、海外との通信を監視したりする動きが目立ってきた。
基本的には、こうした国の中にもインターネットと同じ方式で通信ネットワークが構築されている。しかし、国境で通信を制限するような仕組みがあって海外と自由に通信できなかったり、海外のサイトで公開されている情報を見ることができなかったりする。そして、世界標準のサービスではなく、その国で開発されたサービスの利用が推奨されている。
こうした状況は、Splinternet(スプリンターネット)とか、「インターネットのバルカン化」(バルカニゼーション)と呼ばれている。
初稿公開:1997年6月
最終更新:2020年8月
執筆:下島 朗