毎年恒例の森のイベント「森と踊る木こりフェス」が2022年4月17日(日)に開催されました。今年のテーマは、~森とゆるもう、感じよう~ です。
「森と踊る木こりフェス」は、東京西部・八王子の高尾の近くで”森を体験する”イベントで、このエリアで森の管理を行っている森と踊る株式会社が開催しています。森や自然に関心があっても、普段は森に入る機会が少ない人に、さまざまな森の要素を体験してもらうと同時に本当に豊かな森とはどんなものか感じてもらう機会になっています。
イベントの構成は、今年もワークショップとガイドウォーク、お昼にはクリスタルボウルの演奏を聴いて、あるいは森でボーっとするだけでもいいといった内容です。特に今年は、積極的に集客するのを控えて「参加したい人に来てもらう」という方針にしたそうです。それでも、総勢90名くらいの人たちが八王子市内の森に集まりました。
本物の森で、ゆったりと楽しい時間を過ごす
去年までは森の入口にあった受付が、今年は森の中のイベント会場に移動。そして恒例の、森と踊る株式会社・三木一弥社長(以下、ずーやん)の開会宣言。その後、例年どおり「もののけ広場」で各種ワークショップや売店がオープンしました。
おなじみ、さんちゃん(参田あゆみさん)のショップ「ココペリ」。木のエキスやハーブなど自然の材料で、生活用品などを手作りして販売しています。
天然酵母パンとオーガニックコーヒーの店「パン工房ふらんす」。お弁当は予約制、パンは数量限定で、お昼過ぎには完売していました。神奈川県大和市にある店舗は、森と踊るの木材を使って建てられています。その様子は、こちらの記事で。
手軽にお灸やツボ探しを体験できるコーナー。1枚目の写真は、手にカラフルで小さなお灸が乗っています。2枚目の写真は焙烙灸(ほうろくきゅう)というアタマに載せるお灸。ほかにも、貼るタイプのお灸など気軽で熱くない、そして効果があるお灸で体内環境を良くしていく、そんな知識と体験ができました。
森と踊るが管理している森に生えている草や花と、人が育てた(市販の)植物を組み合わせてリース作りなどを体験する「草・花を観察しよう ワークショップ」。
こちらも恒例の「木感」コーナー。ホームセンターなどで売られている木材は乾燥していますが、切りたての幹や枝は水分が多くてしっとりしています。そんな生の木の質感を、森の丸太を切ることで体験します。
受付のテントでは、今年も木の質感を活かした森と踊るグッズが販売されていました。その場にある製品だけでなく制作依頼が可能なものもあります。
メイン会場「もののけ広場」の真ん中にある焚火のスペースと、その奥の「食べ森クラブ」の一角。食べ森クラブは、森と踊るが継続的に行っている活動のひとつです。
その様子(2022年3月分)は、こちらで。
2022年5月15日(日)には食べ森クラブ体験会があります。
もうひとつ、森と踊るのメンバーが中心になって定期的に行っているのが「枯れ沢を復活させてホタルを飛ばそう」という活動。森と踊るが管理する森の中に沢があるのですが、その下流に作られた人工的なコンクリートの水路によって上流が荒れて、ほとんど水が流れない涸れ沢になっています。ここを適正な環境に整えることで、沢の流れを呼び戻してホタルを復活させようという試みです。
以前は倒木が沢を埋めていて人が入るのを拒んでいましたが、少しずつ整えることで沢筋らしさが戻ってきました。そして上流へいくと、まだ少ないですが水があるのを発見しました!
枯れ沢復活&ホタルを飛ばす会のサイト(note)
そして今年のテーマにもあるように、特に何かをするわけではなく、森の中でゆるゆる過ごしてもかまいません。そうすることで、豊な森、気持ちいい森とはどういう状態なのか感じてほしいというのもイベントの趣旨のひとつです。
お昼の時間には、今年もクリスタルボウルの音色を楽しみました。今年の奏者は守屋直恵さん。例年だと森のウッドデッキで演奏されるのですが、今年は日当たりがいい広場で演奏。森だけでなく、里にも音色が広がっていきました。
森と踊る木こりフェスの、もうひとつの目玉がずーやんと坂田昌子さんのガイドウォークです。実際に森の中を歩きながら、それぞれのお話を聞きます。とても有意義で楽しい話を聞けて、本当に豊かな森とはどういったものか知ることができます。その内容の一部は、昨年の記事に書いています。
年々、環境がよくなっていく森、その気持ち良さを感じる
さて、森と踊るの活動と木こりフェスの変遷について少し紹介しましょう。森と踊る株式会社は、山の所有者から委託を受けて森の管理を行っています。木を切り出して製材して木材を販売しているので、そういった意味では林業の会社です。
社長のずーやんが最初にこの森に来たときは、40~50年前に植えられた木が手入れされないまま放置されていたそうです。そのため、まずは間伐(木を間引くこと)が必要でした。そこで導入したのが、簡単な道具だけで誰でもできる皮むき間伐という方法でした。
木こりフェスも、当初は一般の参加者に皮むき間伐を体験してもらうことがメインでした。当時の木こりフェスと皮むき間伐のようすは、以下の記事に詳しく記載しています。
しかし、ある程度、間伐が進むと、木の数を調整するだけでなく森の土台である土の中の環境を整えることが重要だと思い至り、森と踊るの仕事も土中環境を整える作業が増えてきたそうです。
まったく人の手が入っていない原生林は貴重ですが、そういった場所は日本にはほとんどありません。一方、人が不適切に、あるいは過剰に手を入れた森、林業の衰退によって放置された森は不健全な状態になっています。
昔からある里山は、人が適度に関わって上手に利用することで良い環境が維持されてきました。その作業には手間がかかりますが、そうした活動の重要性を理解して黙々と続ける、そして整った森の気持ちよさを一般の人にも感じてもらう、それが今の森と踊る株式会社の活動のベースになっています。
たとえば、林道(作業道)の脇に、ところどころ大きな穴が掘られています。これは、雨水などの縦の流れを作るため。その中に枯れ枝などの有機物を入れることで、さらに土中環境が良くなっていくといいます。
林道づくりも試行錯誤しながらルートを決めています。このあたりは、昨年は工事中でした。山側の法面(のりめん)は、ほぼ垂直が理想で、そこに自然に小さな穴ができると大地が呼吸して土の中の環境が良くなるそうです。
東京西部の高尾山周辺は植生の境目で、本来は植物の種類がとても多いエリアです。森と踊るでは4年ほど前から専門家に依頼して、管理している森の植生調査を行ってきました。その結果、当初は30種類くらいだった植物が、現在は100種類以上に増えているそうです。それだけ、森が健全になった証です。
こうした話は、ずーやんのガイドウォークで実際に現場を見ながら聞くことができます。ぜひ、参加してみてください。森や自然の捉え方、感じ方が変わります。
また、森と踊る株式会社は木こりフェス以外にもさまざまなイベントや活動を行っています。森と踊るのサイトで確認してみてください。
■森と踊る株式会社のサイト(ホームページ)
過去の「木こりフェス」の様子は、以下のリンクから参照できます。
【イベント事例】森と踊る木こりフェス2021 春
【イベント事例】森と踊る木こりフェス2020
【イベント事例】森と踊る木こりフェス2019
【イベント事例】森と踊る木こりフェス2018@高尾
【イベント事例】森と踊る木こりフェス2017@高尾 vol.1
■イベント名:森と踊る木こりフェス2022
■開催日:2022年4月17日(日)
■場所:東京都八王子市上恩方町の森
■主催:森と踊る株式会社
取材日:2022年4月17日 取材・執筆:下島 朗