2017年4月15日、桜の花びらが舞い初夏を思わせる日差しの下、東京都八王子市内で森と踊る株式会社による選木体験会が開催されました。
このイベントは、4月29日と5月14日に予定される「森と踊る木こりフェス2017@高尾」に先立って開催されたものです。「森と踊る木こりフェス2017@高尾」では、参加者が皮むき間伐を体験します。その際、どの木を残して、どの木を間伐*するか決めるのが選木です。
まずは、森に入って森を知る
午前中は、森と踊る株式会社の三木一弥社長(通称:ずーやん)の案内で会場周辺の森を散策。スギとヒノキの見分け方や森の成り立ちについて聞きながら、少しずつ森に馴染んでいきました。
通常のトレッキングでは、登山道を外れるのは厳禁です。しかしこの日は特別に、森と踊る株式会社が管理する森で、つる草や枯れ枝を払い、落ちた枝を折りながら道のない急斜面を下りました。手入れが不十分な森がどんな状況か実感できる貴重な体験でした。
開けた場所に戻り、参加者が自己紹介。その後、ずーやんの森や自然に対する思いに耳を傾けながらランチタイム。森とも、他の参加者とも、打ち解けてきました。
午後は、いよいよ選木体験です。「森と踊る木こりフェス2017@高尾」の会場のひとつとなる森へ移動します。
ここに苗木が植えられたのは昭和52年。それから40年間、一度も間伐されていません。そのため、植樹したヒノキが密集し、地面にあまり光が届ず下草がほとんどない状態。このままでは、良い木材を生産できないだけでなく、どんどん森が荒れていきます。
選木では、土地の面積に対して幹の断面積の合計が一定の範囲に収まるように残す木を選んでいきます。そのため会場の森は、黄色いテープで50平方メートルごとに区切られていました。
未来の森をイメージして木を選ぶ
まず、参加者が2班に分かれて区画の中にある木を1本1本測り、樹種と位置と太さを記録。そして、計算式から幹の断面積の合計を求めます。この森では、おおむね半分以上の木を間引く必要がありました。木の状態や周囲の木との兼ね合いを見ながら、どの木を残すか決めていきます。そして、残す木には赤いテープを巻きます。
しかし、これが意外に難しい。見るポイントが変わると、選ぶ木も変わってきます。間伐の対象となった木は命を失い復元できません。とはいえ、絶対的な基準や正解がない中で、最後は決断し、間引く木を選ばないといけません。さまざまな意見が出るなか、みんなが納得できるよう調整していきます。こうしたことから、企業研修として選木体験会を行うこともあるそうです。
参加前は、「森と踊る木こりフェス2017@高尾」がメインイベントで、選木体験会はその準備イベントという認識でした。しかし、ずーやんは「皮むきは楽しい作業ですが、より大事なのは選木。どの木を残すか、500年後の森を想像しながら決めていく」と言います。その意味を実感した1日でした。
この森は、7~8年後に再び間伐の時期を迎えます。このエリアで、数百年後に残っている巨木は「おそらく数本」と、ずーやんは言います。今回、私たちが残した木の中にも、きっと未来の巨木があることでしょう。
*間伐(かんばつ):林業で、木を育てる過程で密集しすぎた木を間引くこと。木の数を減らして空間をつくることで木が太く育ち、よい木材を生産できます。通常はチェーンソー等で切り倒しますが、森と踊る株式会社では樹皮を剥がす「皮むき間伐」という方法を取り入れています。
■イベント名:森と踊る 500年後の森とつながる選木体験会 Vol.1
■開催日:2017年4月15日(土)
■場所:東京都八王子市恩方町の森
■主催:森と踊る株式会社
下記、森と踊る株式会社のホームページで「森と踊る木こりフェス2017@高尾」の詳細確認と参加手続きができます。このイベントでは、一般の参加者が皮むき間伐を体験できます。
※「森と踊る木こりフェス2017@高尾」は終了しましたが、森と踊る株式会社のホームページでイベント報告や他のイベントの情報をご覧いただけます。
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取材日:2017年4月15日 取材・執筆:下島 朗