3.マイクロソフトは、良くも悪しくも官僚的でサービス過剰。
たとえば、「おせっかいなWordの機能を止める方法」といった記事を見たことはないでしょうか。少なくとも私は、こうした記事を何度か書いたことがありますし、他のメディアに掲載されているのを見たこともあります。
具体的には、英文を入力すると先頭の文字が自動的に大文字になるとか、行の頭に●や数字を付けて改行すると箇条書きと判断されて、次の行の頭に同じ記号や次の番号が付くとか。こうした機能は、文書作成が苦手な一部の人にはいいかもしれません。しかし、文章を書くことに慣れている者にとっては、煩わしいだけ、余計なお節介、過剰なサービスだと思います。
その一方で、少し機能的に深い設定を変更しようとすると、途端に技術的で難しい項目や専門用語が出てきたりします。これには3つの理由があるのではないかと想像しています。
まず、Windowsでも他のアプリでも、マイクロソフトの製品はとにかく多機能なものが多い。機能が多すぎて、結果的に設定項目が増大しています。そして、いろいろなレベルの設定が同じ設定画面の中に並んでいたりするので、一般ユーザーには理解が難しい項目まで見えてしまいます。
それと、多くの製品がシステム担当者のいるような大企業から中堅企業で使われることを前提としているように感じます。そのため、こうしたシステム担当者の多種多様な要望にも対応できるように細かな変更や深い部分の設定が可能になっているように思います。
さらに、これは勝手な想像ですが、マイクロソフトは大企業へと成長する過程で、かなり縦割りの体質になったのではないでしょうか。
たとえば私は、Office 365 Businessを導入する前に、Office 365 Soloと比較しました。双方の案内ページを開いてサービス内容を比べていると、画面の片隅にチャットの画面が現れました。そこで、双方のチャット担当者に「Office 365の導入を考えているが、BusinessにするかSoloにするか迷っている」と聞くと、どちらも自分が担当するサービスの機能を繰り返すだけで参考になりませんでした。双方の機能を比較して「お客様でしたら、こちらの方が…」といった提案はできないのです。
結局、複数のデバイス(パソコンやスマホ)を使ったとき、Office 365 Businessの方が融通が利きそうな気がしたので(あくまでも気がしただけです)、Businessを選んだのですが、今回、OneDriveの仕様の違いに戸惑ったことを考えると、1人で使うならSoloの方が扱いやすかったかもしれません。
ついでに書いておくと、Office 365 Businessを使い始めて困惑していることが他にもあります。それは、パソコンを起動するたびに、Microsoft Teamsというアプリが勝手に起動してログインを求められることです。しかも、その画面が有無を言わせぬほど大きいのです。
私は、このアプリをインストールしていません。どうも、Office 365 Businessに含まれるアプリを何かインストールすると、Microsoft Teamsも勝手にインストールされるようです。
Microsoft Teamsは、同じ職場の仲間(同じ契約のOffice 365 Businessを使っている人)同士でチャットをしたり、共同作業をするとき役に立つアプリだそうです。しかし私の場合、パソコンを2台並べて、どちらも自分が使っている状態なので必要ありません。しかし、そんな事情は考慮されることなく強制的にインストールされてしまいます。
同じように悩んでいる人が多いようで、ネット検索で「microsoft t」まで入力すると、見事に「microsoft teams うざい」という検索候補が出ました。それを選ぶと、Microsoft Teamsの起動を止める方法や削除する方法が、たくさん出てきます。ところが、それぞれ書いてある内容(止めたり削除したりする方法)が違うのです。
どうも、Microsoft Teamsは頻繁に仕様が変更されているようで、以前はこの方法で止められたけど、今はこっちの方法でないと止められない、といった現象が発生しているようです。ただし、必要性の有無にかかわらず強制的にインストールされるという仕様だけは変更されていません。ぜひとも、インストールするかしないか自分で選べるようにしてほしいものです。
マイクロソフトの製品やサービスは基本的にビジネス向け。
この記事の前半にも書きましたが、私はマイクロソフトは真摯な会社だと思っています。かのドラッカーも、著書『マネジメント』の中で「経営者に求められる最も根本的な資質は、真摯さである」といったことを書いています。真摯であることは大切です。
世の中には、マイクロソフトを悪の帝国のように思っている人もいるようです。しかし私は、Windowsという一大プラットフォームを世界中に提供し、今も維持しているスゴイ会社だと思っています。お世辞ではなく。
とはいえ、そんなマイクロソフトも盤石ではありませんでした。かつて、大型コンピューターの時代にはIBMが業界の王者として君臨していました。しかし、パソコの時代になって、マイクロソフトとインテルが取って代わりました。この変化を身をもって知っていたマイクロフトは、次の時代も覇者でいるために最大限の努力をしてきたと思います。
しかし、インターネットとスマホの時代になった今、王者はグーグルに変わりました。加えて、アップル。そして、フェイスブックやアマゾンが世界を牛耳るプラットフォーマー(GAFA)と呼ばれています。この中にマイクロソフトの名前はありません。
グーグルとアップルがすごいと思うのは、裏では(たぶん)ものすごく高度な技術を使っているのに、エンドユーザーにそれを感じさせない点です。グーグルの検索サイトは今もシンプルだし、iPhoneのデザインは革命的でした。これによって、今のスマホのデザインが規定されてタッチ操作が標準となったのです。
実は、バージョンアップ作業の前に各種データをバックアップしているとき、Google Chrome(グーグルが提供しているブラウザー)のブックマークを保存するのを忘れました。ところが、新しいパソコンでGoogle Chromeを起動して、自分のGoogleアカウント(Gmailアドレス)でログインすると完全に復元されたのです。なんとも気が利いています。
一方、マイクロソフトは、かつてはゲーム機も作っていたし、モバイル機器用のOS(Windows Mobile など)もリリースしてきました。しかしどれも、それぞれの分野のライバルに勝つことができませんでした。
やはり、マイクロソフトは会社の体質としてコンシューマー(エンドユーザー)向きではないんだと思います。企業向けの製品やサービスの方が、企業風土に合うのではないでしょうか。
事実、現在のマイクソフトはサーバー用OSの世界でユニックス系を追い越してシェアNo.1を取っています。かつて、この分野はユニックスが圧倒的に強く、技術者から「Windowsパソコンは子供のおもちゃ。そんなもので仕事はできない」とまで言われたそうです。隔世の感があります。
最後の最後に、普遍的かつ不変な結論。
以上、長くなりましたが、Windowsは今もマイクロソフトの主力製品のひとつです。しかも、サーバーやクラウドサービスとの結びつきが強くなっています。仕事で使っているWindowsをバージョンアップして、今後も安定的に使おうと思うと、どうしても最低限の知識が求められると思います。少なくとも、その覚悟を持っていたほうがいいでしょう。
私は今回、問題に遭遇するたびにネット検索に助けてもらいました。ただし、この対処法にも問題があります。まず、マイクロソフトの公式ガイドは記述内容を理解するのに苦労することがあります。翻訳文のためなのか、上記のように基本的な技術知識があることを前提としているためなのか判断しきれませんが。
もうひとつは、個人のブログ等で紹介されている対処法は最新版とは限りません。たとえば、Outlook2016は、最初のころと現在でメール送受信の設定方法が変わっています。なので、初期版の設定方法に基づいて説明された記事を読んでも、画面や項目が違うため参考になりません。
こうした点も含めて、やはり相応のネットリテラシー、ITリテラシーが求められるのが実情です。ちなみに、このブログ記事も、しばらくすると内容が古くなって陳腐化すると思います。ご注意ください。
いずれにしても、2019年(令和元年)の秋から年末にかけて、Windows7からWindows10へのバージョンアップは避けられません。Windows8.1の人も、2023年1月10日で延長サポートが終了します。3年後に同じ苦労がやってきます。
最終的な結論は、あまりにも平凡ですが「早めの準備と対策」に尽きます。ご健闘を、お祈りします。
残念ながら機を逃して、今まさに苦労している人は、お金で解決するのが一番じゃないかと思います。つまり、仕事用なら業者に相談する、個人用なら新しいパソコンを買うということです。なにしろ、この記事をここまで読んだということは、あなたにとってパソコンは大事な道具のはずですから。
では、また。
下島 朗