他人の失敗談は蜜の味、あなたも蜜を提供しますか?
この記事の前半でも書いたように、私は以前、パソコン雑誌のライターをメインの仕事にしていました。その頃は、自分で部品を選んで自作パソコンを何台も組み立てたし、Windowsのインストールやバージョンアップも何十回も経験してきました。
にもかかわらず、今回のWindows7からWindows10へのバージョンアップは大苦戦しました。その理由として、まず「今でも自分はできる」という思い上がりがあったと思います。残念ながら「昔取った杵柄」は通用しませんでした。実際のところ最近は、パソコンやWindowsに関する情報を以前ほど追っていないことが大きいと思います。
大企業や中堅企業でシステム担当者がいる会社、あるいはITベンチャーのように全員のITスキルが高い会社なら、Windowsのバージョンアップなど大きな問題ではないかもしれません。しかし、中小零細企業や個人事業、スモールビジネスやスモールオフィスで通常業務の合間に作業を進めていくと、思いのほか手間と時間がかかる可能性があります。
私の、この失敗談を他山の石にしていただければ、この長文を書いた甲斐があります。この記事を最後まで読んでくれたあなたにとって、少しでも役に立つ内容があればうれしく思います。あなたが、失敗談を披露する側にならないことを祈ります。
まとめ
さて、この長い記事も、ようやくまとめに来ました。今回の、Windows7からWindows10へのバージョンアップ失敗から学んだこと、再認識したことは以下の3点です。
1.スモールビジネスでもIT投資は計画的に。
2.継続性のあるデータを引き継ぐのが最も困難で手間がかかる。
3.マイクロソフトは、良くも悪しくも官僚的でサービス過剰。
では、それぞれ詳しく解説しましょう。
1.スモールビジネスでもIT投資は計画的に。
大企業や中堅企業なら、情報システムへの投資も予算に応じて計画的に進められていることと思います。もちろん、予算の削減だとか予定の先送りだとか、現場の担当者には苦労があると思います。しかし、末端のユーザーが自分の仕事の合間に更新作業をする、といったことはないでしょう。
一方、スモールビジネスだと、一度導入したパソコンは「ずっと使える資産」といった認識を持つ人が多いのではないでしょうか。「Windowsをバージョンアップしてください」なんて言われると「え、まだ使えるのに何で?」という感じではないかと思います。
Windowsのバージョンアップが必要な理由は、この記事の前半に書きました。仕方がないんです。マイクロソフトが暴利をむさぼるための策略ではないんです。
今は、クラウドコンピューティングと呼ばれるサービスが普及しています。ほとんど場合、データセンターという堅牢な建物の中に大量の記憶装置が設置されていて、それが24時間365日、止まることなく動いています。この記憶装置、最近はSSDが多いですが、以前はハードディスクが主流でした。
ハードディスクは内部で円盤が回っているため、長く使っていると故障率が上がります。一方、もしも記憶装置が故障して利用者のデータが消えたり、サービスの継続ができなくなったりしたら大問題です。その会社は一気に信用を失って、ユーザーが離れていくでしょう。
そのため、事前にハードディスクのデータを取って、どのくらい使うと故障率が高まるか把握しておきます。そして、その時期が来る前に、壊れていなくても新品に交換します。壊れて(止まって)から対応すると大変なことになりますが、壊れる前に計画的に交換すると作業もスムーズです。もちろん、その費用は事前に予算化されています。
今や、IT関連の機器やサービスは社会やビジネスの重要なインフラです。故障やトラブルで止まるといった事態は極力避けたいわけです。
これは、スモールビジネスでも同じです。少なくともWindowsやOfficeのサポート終了など、あらかじめ時期が分かっていることに対しては、早めに予算を確保してスケジュールを組んで計画的に更新しないと、たぶんつらい思いをします。計画的な更新が、自分と自分のビジネスを守ることになるでしょう。
2.継続性のあるデータを引き継ぐのが最も困難で手間がかかる。
この記事の中で、メールとメールソフトの引継ぎについて、かなりの字数を使って書いてきました。実際のところ、過去のメールを読み返すケースはまれです。仕事のメールは、以前のやり取りを確認するために読むことがありますが、メルマガ等は保存しておいても読み返すことはまずありません。
とはいえ、10年以上購読しているメルマガが消えてしまうのは悲しいものです。特に今は、メルマガ配信サービスの「まぐまぐ」がバックナンバーの公開を止めてしまったので、読み返したくても読めないケースがあります。
それと、際限なく長くなりそうだったので書かなかったのですが、実は経理ソフトのデータ引継ぎでも問題が発生しました。結論として、新しいパソコンでは継続使用のためのライセンス認証が取れない可能性が高いため、今も会計業務だけ古いパソコンを使っています。弊社は9月決算なので、今期の決算報告が終わるまでは古いパソコンで従来の経理ソフトを使い、10月からは新しい経理ソフトを導入することにしました。
たとえば、WordやExcelの文書、デジカメ写真といったデータを引き継ぐのは比較的簡単です。外付けハードディスクなどに一時保存して、そのデータを新しいパソコンに戻せば完了します。そして、それぞれのデータに対応したアプリを新しいパソコンにインストールすば問題なく開くでしょう。
ただし、使用していたアプリが古くてWindows10に対応していないといった場合、あるいは以前のパソコンで使っていたアプリが最初からそのパソコンに組み込まれていたもので新しいパソコンに引き継げないといった場合は、それぞれのデータに対応した新しいアプリを用意する必要があります。ほとんどの場合、お金がかかります。
とにかく、メールや経理など継続性があるデータを止めることなく、あるいは途切れる期間をできるだけ短くして新しいパソコンに引き継ぐことが難しい。そういった認識をもって慎重かつ計画的に作業を進めることが肝要です。