※この記事は、2019年9月現在の状況に基づいて書かれています。
Summary
2020年1月14日にWindows7のサポートが終了します。そのため、2019年7月から仕事用のパソコンをWindows10にバージョンアップしました。こうした作業は、過去に何度もやっているのでスムーズに行くと思っていたのですが、今回は大苦戦してしまいました。この経験から得た最大の学びは、スモールビジネスでもIT投資は計画的に進めないと自分が苦労するということでした。
なぜ、新しいWindowsに変える必要があるのか。
Web記事をはじめ、さまざまなところで情報が流れているので、すでに知っている人が多いと思いますが、2020年1月14日にWindows7のサポートが終了します。そのため、この日までにWindows7の使用をやめて、新しいOS(基本ソフト)、実質的にはWindows10に乗り換えてくださいとアナウンスされています。
しかし、私が日々の仕事に使っていたWindows7のパソコンは、まだまだトラブルなく安定して動いていました。なので、できるだけ変更を加えたくないし止めたくない。できれば、このまま使いたいというのが本音でした。
とはいえ、私自身、いくつかのメディアに「サポート終了前に新しいWindowsに更新してください。サポートが終了したWindowsは使わないでください。どうしても残す必要がある場合は、インターネットに接続しないでください」といったことを書いてきました。なので自分が、こっそりとWindows7を使い続けるわけにはいきません。
ではなぜ、Windowsの更新が必要なのでしょう。サポートの終了とは、どういうことなのでしょうか。このあたり、よく分かっている人は、この記事の前半は読まずに後半だけ読んでもらえばいいかと思います。
では、改めて、なぜ新しいWindowsにバージョンアップする必要があるのか。それは、世界中にネット犯罪者がいて、インターネットを通して悪用できるパソコンを探しているからです。
分かりやすいところから書くと、昔から「パソコンがウイルスに感染する」といった話を見聞きする機会があったと思います。そして、ウイルスに感染すると画面に変なメッセージが出たり、パソコンの中のデータを壊されたり、データを盗まれたりするらしい。こうした認識を持っている人は多いでしょう。
でも、自分のパソコンには大したデータを保存してないし、今まで被害にあったこともないから、これからも大丈夫だろう。と、思いたいのが人情だと思います。しかし、こうした被害は交通事故と同じで、一度起こると想像以上に面倒なことになります。なので、自動車保険が必要なように、万が一に備えてパソコンにも安全対策が必要なわけです。
そんなことは知っている、だから自分はセキュリティソフトを入れている、これで十分じゃないの? という人もいるかと思います。もちろん今の時代、セキュリティソフトは必須ですが、それだけでは守り切れない現実があります。古いWindowsは、内部構造が古いため最新のセキュリティ対策を施すことができないのです。
更新が必要なのはパソコンだけじゃない。
たとえば、建築業界には「昭和56年以降の新耐震基準」というものがあります。耐震基準とは、どのくらいの地震に耐えられるか、その能力を定めたものですが、昭和56年以前の基準では震度5程度の揺れに耐えられる住宅を建てましょうと規定されていました。しかし、これでは不十分ということで基準の改正があって、新基準では震度6以上の揺れで倒壊しない住宅にしようということになりました。
この改正の前後では、外から見たら分からなくても内部の柱の数や太さ、壁の厚さなどが違います。そのため、昭和56年以前に旧基準で建てられた住宅は地震に弱くて住み続けるのは不安だし、売買の際にも不利になります。
自動車の排出ガス規制も同じです。20世紀後半、世界各国で大気汚染物質を減らすために次々と厳しい規制が導入されました。これらの基準の中には、施行前に生産された車でも車検を通せば乗り続けられるものもあるし、基準をクリアさせないと走らせることができないものもありました。いずれにしても、車を使い続けるなら、新しい規制に適合した車種に替えていく必要があります。
家電製品は従来、特に耐用年数を定めていないものが多かったのですが、最近は状況が変わりつつあります。たとえば、古い扇風機のモーターから火が出て燃え上がる映像を見たことがあるでしょう。そのため今は、耐用年数を10年程度と表記して販売している扇風機が増えています。
モノを大切にして長く使う。ある程度の年齢より上の世代には、今もこれが美徳という認識があるかもしれません。親の世代はそうだったという人もいるでしょう。しかし、これは古き良き時代の話で、製品の特性にもよりますが、今は安全性を確保するために適切なサイクルで新品に替えていくことが避けられない時代になっています。
パソコンも同様で、見た目は何も問題なく、今は正常に動いていても、やはり定期的な更新が避けられません。
パソコンは、中身から時代遅れになっていく。
インターネットの利用が急速に拡大していた2000年代の前半、「インターネットの世界はドッグイヤー」と言われていました。犬は人間の約7倍のスピードで齢を取る。つまり、犬の5歳は人間の35歳に相当する。同じように、インターネットの世界は一般的な産業の7倍のスピードで進化するといった意味です。
今は、そこまで速くはないと思いますが、それでもインターネットをベースとしたIT企業は、成熟した産業より速いスピードで進化と拡大を続けていると思います。たとえば、プロ野球チーム・横浜NeNAベイスターズのオーナー企業、ディー・エヌ・エーの創業は1999年です。国内利用者が8000万人といわれるLINEの創業は2000年です。2019年7月にサッカーJリーグの鹿島アントラーズを子会社化したメルカリの創業は、なんと2013年です。
話を戻しましょう。今はパソコンをインターネットに接続するのが当たり前なので、こうした急速な進化の影響はパソコンにも及びます。仮に、インターネットやパソコンの分野が今も一般的な産業の3倍のスピードで進化しているとしたら、10年前のパソコンを使っているということは30年前の車に乗っていることに相当します。
そしてパソコンの場合、ハードウェア(機械)としては問題がなくても、その中で動いているソフトウェアの方が先に時代の変化に追いつけなくなります。特に、パソコン操作の基本的な機能を提供し、さまざまなアプリ(アプリケーションソフト)が動く土台となっているOS(基本ソフト)の構造は重要です。これが古くなると、機械としてのパソコンに問題がなくても、装置としてのパソコンは時代遅れになってしまうわけです。
そして、パソコン用のOSといえば世界でも日本でも9割以上がWindowsです。なので、Windowsの更新が大きな関心事になるわけですが、もちろんMacも定期的なOSのバージョンアップは避けられません。そして、たとえばMac用のアプリも「macOS X 10.7以上に対応」とか、iPhone用アプリだと「iOS 11以上に対応」とか指定されていますよね。
一方、実はWindowsでは、新しいWindowsに非対応の古いアプリでも問題なく動くケースが少なくありません。最近のWindowsには、そういった機能が内蔵されています。これを「互換モード」といいます。こうした点では、アップルの方が厳格(冷徹)なんじゃないかと思います。
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