ひとつ前のブログ記事に「石油が枯渇する日は来ない」と書きました。
地球全体の石油埋蔵量には限りがあるので、使い続ければいつかなくなる。しかし、残り少なると価格が高騰するので代替えエネルギーへの転換が進み、最後の一滴まで使われることはない。という趣旨でした。
今は化石燃料による温室効果ガスの問題もあるので、別の理由で代替えエネルギーへの転換が進むかもしれません。
といったことを踏まえて、今回は原発の話題です。
世の中には二種類の人がいます。原発を再稼働して、重要なベースロード電源として今後も活用したい人。原発は危険だとして、運転再開に反対の人。
実際には、安くて安定的に電気が供給されるなら、原発でも他の発電方法でもいい。意識してない、気にしない、という人がいるので「三種類の人がいる」というのが適切でしょう。しかも、たぶん、こういう人が最も多いと思います。
しかし、ここでは原発推進派と原発反対派がいるということで話を進めますが、どちらにも言い分があります。個人的な印象としては、推進派は論理的に納得させようとする傾向があって、反対派は感情論で話す人が多いように思います。
いずれにしても、それぞれの主張を聞いていたらキリがありません。統計データを自分の主張に都合よく作成するのはワリと簡単なことですし、感情論は何かの拍子にガラっと変わることがあります。
たとえば、再生可能エネルギー発電促進賦課金というのがあります。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーは発電コストが高いのに、電力会社は一定の条件下で買い取りが義務付けられています。そのため、再生可能エネルギーの買い取りで発生した赤字を一般の電気利用者から徴収しています。
その金額は年々上がっています。月の使用量が300kWh(東京電力の従量電灯Bだと月額8000円くらい)の家庭だと、平成24年度は月66円で年額762円でした。それが、平成30年には月に870円で年額10,440円になっています。
なんとなく「原発は危険だから」と反対している人は、再生可能エネルギーを普及させるために今も年間1万円以上を強制的に負担させられていることをどう思っているでしょう。これまで知らずにいて、あるとき気づいたら、どう思うでしょう。さらに、この金額が年間数万円になったらどうでしょう。
国は、3年ごとに「エネルギー基本計画」とまとめています。これが、中長期的なエネルギー政策の方針となります。2018年5月に発表された案には、再生可能エネルギーのコストを下げて経済的に自立した主力電源とする、原発は技術開発は進めるが可能な限り依存度を下げる、石炭発電所は維持する、といった内容が盛り込まれています。
各発電方式の割合(エネルギーミックス)は、再生可能エネルギーを22~24%、原子力を20~22%、火力を56%程度という目標が従来どおり維持されています。
つまり、再生可能エネルギーの発電コストを下げて比率を上げるけど、原発はなくしませんよ。結果的に二酸化炭素の排出量が多い火力発電の比率が高い状態が続くけど仕方ないですね。といった感じに受け取れます。
話を戻しますが、この投稿の趣旨は原発の是非ではありません。将来的に原発をなくすことが出来るとしたら、どうすれば実現できるか、ということです。
答えは、原発より安定的かつ低コストで安全な発電方式を普及させればいい。特に大事なのは、原発で作った電気より値段が安いことです。
原発は、問題なく稼働していれば安定的に大量の電気を供給してくれます。そして、これまでの計算では他の方式に比べて安価とされてきました。とはいえ、廃炉や使用済み燃料の最終処理にかかる費用、安全対策の強化にかかる費用、さらに事故の補償費などを含めて計算し直したらどうなるか。個人的には、かなり気になります。
いずれにしても、原発より低コストな方法が普及すれば、いずれ原発はなくなります。そして現在、その候補のひとつが再生可能エネルギーです。とはいえ、これもけして簡単ではありません。強力なリーダーシップのもと、相当な大鉈を振るわないと実現は難しいと思います。
しかも、太陽光、風力、地熱など使えるエネルギーをすべて使っても、日本国内で必要とされる全エネルギーを賄うことができない、足りないという話も聞きます。そうなると、日本の製造業が国際的な競争力を下げるかもしれません。そうした情況に、また新たな拒否反応を示す人もいるでしょう。
原発より安定的かつ低コストで安全な発電方式を開発するもの、普及させるのも簡単なことではありません。可能だとしても、数十年はかかるでしょう。
いずれにして、感情論に流されることなく、フェイクデータに騙されることもなく、より良い未来をつくるために社会構造を変えていく、その変化を受け入れていくことが必要なのではないでしょうか。
では、また。
下島 朗