前の投稿の続きです。
20年前、「自社サイトに人を呼び込むコンテンツを、1人で作ってほしい」と依頼されました。しかし、ほかの仕事をこなしながら大量の記事を書き続けることはできないし、出版社のプロ集団に太刀打ちできません。
そこで、少しづつ記事を増やしていくことで価値が高まるコンテンツができないか、と考えました。
いろいろ考えて、私は辞典コンテンツを提案しました。当時すでに、いくつかの企業サイトに、いろいろな分野の用語集がありました。しかし、一時的な予算で数十語くらい収録して、その後は更新されないのが一般的でした。
今ならニッチ、でも20年前は事情が違った
そこで私は、クライアントに「最初は100語で始めましょう。その後、毎月、用語を増やしていきます。これなら毎月、一定の予算で運営できるし、続ければ続けるだけ価値が高まります。いずれは、500語、1000語になる日が来るでしょう」と提案しました。自分としては、雑誌で連載記事を持つような感覚でした。
扱うのは、パソコン用語にしました。当時はまだ、NTTドコモのiモードも始まっていません。インターネットはパソコンで見るもので、インターネットの利用者は日本全体で300万人とか500万人といわれていました。この人たちの共通点は「パソコンを使うこと」です。
今、個人がネットで情報発信するならニッチを狙え、これが定石です。しかし20年前、インターネット利用者で、かつ懸賞に関心がある人、というベン図を考えると対象者は極めて少数でした。そこで、インターネットの利用者全員がターゲットとなるようにパソコン用語を選びました。
しかも当時は、まだまだITリテラシーの低い人が多くて「パソコンを持っていないのにWindows 95を買いに行った」「パソコン店で、インターネットを1台くださいと言う人がいる」なんて都市伝説的な話が(たぶん)実話だった時代。
さらに、当時のコンピュータ用語辞典や取扱説明書(マニュアル)は専門用語だらけで「マニュアルを読むためのマニュアルが要る」といわれていました。
そんなこんなを踏まえて、通常の辞書とは逆に、解説文が長くなっても一般のパソコンユーザーが理解できる文章で書く。とりあえず概要を理解できるレベルの知識を提供する、という方針で始めました。裏を返すと、私自身が元々コンピュータ技術者ではないので、一般ユーザーレベルでしか書けないという事情もあったのですが。(笑)
1997年5月に「用語解説辞典」(最初は別の名称でした)をスタートしたとき、用語数は103語。その後、コツコツと用語を追加して、最終的に3200語を超えました。
クライアントであるNTTPCコミュニケーションズは当初、パソコン通信サービスがメインの会社でした。現在は、主に企業向けクラウド、ネットワーク、各種ITサービスなどを提供しています。そのため「用語解説辞典」に登録する言葉も、専門的なIT用語が多くなってきました。
それでも当初と同じように、解説文が長くなっても一般の人が理解できる文章で書く。とりあえず概要を理解できるレベルの知識を提供する、という方針を続けました。裏を返すと、私自身が元々コンピュータ技術者ではないので、今でも一般ユーザーレベルでしか書けないという事情もあるのですが。(笑)
20年前に比べると、インターネットを使う人も、インターネット上の情報量も、爆発的に増えました。そういった状況のなか、用語によっては「用語解説辞典」の解説文がGoogle検索の上位に出ることが多くなりました。1番に出たときは、なぜかドキッとしました。
人の行く裏に道あり花の山(投資の世界の格言)
たゆまざる 歩みおそろし かたつむり -北村 西望(彫刻家)
打つ手は無限 -滝口長太郎(実業家)
50代も半ばになって、やっぱり「こうした言葉は正しいんだな」と思わざるを得ません。『事例s』も、コツコツと続けていきたいと思います。
では、また。
下島 朗
※ NTTPCコミュニケーションズの「用語解説辞典」は、公式サイトのリニューアルに伴って 2019年3月に公開終了となりました。最初の公開から21年10ヶ月でした。長年に渡って多くの方にご利用いただいたことに感謝するとともに、この場を借りてお礼申し上げます。(2019年3月:追記)