前の投稿に書いているように、私はNTTPCコミュニケーションズの公式サイトで公開されていた「用語解説辞典」というコンテンツを20年間、書き続けてきました。
一般に、インターネットの情報は変化が速いといわれますが、この認識は20年前も同じでした。しかし私は「用語解説辞典」を始めたときから、インターネットコンテンツの価値はフロー型だけではない、スットク型の価値も作れると考えていました。
最初のコンテンツは1年あまりで終了
「用語解説辞典」は最初、別の会社のホームページでスタートしたのですが、実はその前にも、その会社から依頼を受けてホームページ用のコンテンツを作成していました。
当時、インターネットでは懸賞情報を集めたサイトが人気で、そうしたサイトがいくつかできていました。そして「同様のサイトを作りたい」という依頼を受けて、この話を持ち込んだ友人のデザイナーと共に懸賞情報サイト立ち上げたのです。
しかし、これがなかなか厳しい作業でした。パソコン操作が得意な主婦にも声をかけて3人で懸賞情報を集め、企業に電話して情報掲載とリンクの許可をいただき、データベースソフトに情報を入力して送る。この作業を毎週繰り返しました。普通のライターとして、取材に行ったり雑誌記事を書きながら。
時代としては、インプレス社のINTERNET Watchが台頭し、その勢いに乗ってPC Watchがスタートしたころでした。
紙の雑誌は、記事を書いて編集して印刷して書店に並ぶまで時間がかかります。しかも、印刷した記事は修正できない。一方、インターネットなら取材した日に記事を書いて配信できる。しかも、公開したあとでも修正可能。これは革命的、インターネットのメリットは、このスピード感にある。当時、インターネットで情報発信する人は、ほとんどそういう認識だったと思います。
この波に乗るべく、3人で懸賞情報サイトを運営したのですが、インプレスの記事を作っているのは元々、その分野の専門ライター、記者、編集者というプロ集団。扱える情報の量も質も、とても太刀打ちできません。
そういった状況を、クライアントも感じたのでしょう。あるいは、あまりアクセス数を稼げなかったのかもしれません。私たちの懸賞情報サイトは、1年ほどで終了となりました。
しかしその後、同じ会社から「なにか、自社サイトに人を呼び込むコンテンツがほしい。今度は、下島だけでやってほしい」という話がありました。
せっかくの依頼なので、何かやりたい。しかし、これまで3人でも勝負にならなかったのに、今度は1人。しかも、予算は減額です。
悩みました。
いずれにしても、どんどん取材して、どんどん書いて、どんどん公開する。このやり方では勝てない。勝負にならない。これは明白です。
実際には、後にブログが普及したとき、1日に何回も投稿して人気を集めるブロガーが出てきたので、個人でも数で勝負する戦法が不可能ではありません。しかし、少なくとも当時、企業サイトに提供するコンテンツとしては無理だったと思います。
で、私が考えたのは継続型でストック型のコンテンツです。他の仕事をこなしながら、1人で大量の記事を書き続けることはできない。そこで、少しづつ記事を増やしていくことで価値が高まるようなコンテンツができないか、と考えました。
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記:下島 朗