『事例s』のコンセプトは、
エコ社会を加速して、
より良い未来を造るため。
この目的を実現していくための事例紹介サイト、それが『事例s』です。
しかし、これは表向きのコンセプト。多くの人に受け入れてもらえる、耳障りの良いキャッチフレーズのようなものです。
今の時代、「エコ社会を進めましょう」といわれて反対する人は少ないでしょう。「より良い未来にしましょう」といわれて異を唱える人は、もっと少ないと思います。
しかし、「より良い未来」のイメージは人によって違います。原発がない未来が「良い未来」と考える人もいれば、原発の安全性が確立された未来が「良い未来」と考えている人もいるはずです。
つまり「エコ社会を加速して、より良い未来を造る」というフレーズは「総論賛成、各論反対」という、ありがちな結果につながる言葉なのです。それを承知のうえで掲げています。
そのため自分の中では、もう少し具体的なコンセプトを持っています。表コンセプトに対して裏コンセプト、というか真コンセプトという方がいいかもしれません。それは、
エコピジネスを加速して、
みんなの利益を増やすため。
しかし、このフレーズを説明なしに掲げると、誤解を招くリスクがあると思うのです。単にエコ関連の業者を儲けさせるサイトなのか、『事例s』はそういった事業者だけを応援するのか、と思う人がいるでしょう。
もちろん一義的には、エコ関連の事業者の方々に自社の製品やビジネスをPRするために『事例s』を使ってほしいと思っています。しかし、エコ関連の事業者なら誰でもどうぞ、というわけには行きません。
たとえば、2012年に太陽光発電に高いFIT(固定価格買取制度)が設定されると、翌年にかけて太陽光発電の事業申請が殺到しました。しかし、数年たっても稼働しない計画が多く、なかには明らかに太陽光発電に向かない土地もあったと聞いています。
残念ながら、エコ関連の事業者の中に一部こういった人もいます。『事例s』は、良い事例を紹介することを目的としているので、良くない事例は依頼があっても取材しません。あるいは、良くない事例だと分かるかたちで記事にしたいと思っています。
また、「みんなの利益」の「みんな」にはエコ製品のエンドユーザーはもちろん、エコ製品を直接使っていない人たちも含んでいます。
たとえば、従来の照明をLED照明に変えると消費電力を半分から10分の1くらいに減らすことができます。業務用エアコンなどの建築付帯設備、工場で使われている機械設備も、新型に入れ替えると効率が上がります。
つまり、エンドユーザーも「電気代を減らす」といった利益を得られます。加えて、こうした活動に積極的な企業は、環境意識が高い事業者として社会的に良いイメージを持たれるでしょう。このような、エコな設備の導入に積極的な企業も紹介していきたいと考えています。
さらに、社会全体が少ないエネルギーで効率よく回るようになれば、エコ製品を直接使っていない人にもメリットがあります。
たとえば、東日本大震災のあと原発がほとんど稼働していません。その代わりに火力発電所がフル稼働していて、その燃料(天然ガスや石油など)を海外から購入するため日本は大きな貿易赤字を出してきました。日本全体で消費電力が少なくなれば、輸入する燃料を減らすことができます。
もちろん、日本だけが良ければいいわけではありません。日本が世界の先頭に立って省エネルギー社会をつくり、その技術や製品や社会システムを世界に広げていけば、地球に暮らす人みんなにとって利益になるはずです。
では、また。
下島 朗