地元の木を活用して森を元気にしたい。
東京都日野市の七ツ塚ファーマーズセンター。都市農業を守り、市内の農家を支援するための拠点です。2015年10月、そこにユニークな設備が増設されました。多摩地域の間伐材で造られたフォレストドーム(FOREST DOME)です。開発したのは、一級建築士の北村淳さん(写真左)。「森林整備につながる、地元の木を使った商品開発」を目指して考案されました。
植林の際は、まず苗木を多めに植えます。そして成長とともに間引いて、最終的に太くまっすぐ育った木を出荷します。間引かれた木を間伐材といって、林業の過程で必ず発生しますが、そのまま放置されることが多いそうです。また、国内の木材は外材に押されて、ここ20年ほど価格の下落が続いてきました。こうした状況のなか、間伐材を活用できれば林業を維持して森を守る一助になります。また、木材は運搬距離が価格に大きく影響します。地元の木を使えば、値段を抑えて燃料消費を減らすことができます。
緑のドームや茶室にも、多彩なバリエーション。
ドームは、正20面体の下5面を切り取った形状で、正三角形の組み合わせなので強度があります。その各辺を25本の間伐材丸太で構成し、11個のリング金物でつないでいます。「間伐材の小口を正確にカットするのが製作上のポイントでした」と北村さんはいいます。
フォレストドームの最小構成はフレームのみですが、テントを被せたり、壁を付けたり、植物で覆って緑のドームにしたり、さまざまなバリエーションがあります。本格的な屋根やドアを付ければ物置や茶室にもなります。また、部材だけ購入して自分で組み立てることも可能です。
自然に溶け込む感じを自由に味わってください。
七ツ塚ファーマーズセンターに設置されたのは、一部を囲ってテント屋根を付けたタイプ。一辺1,700mmの基本サイズで、中にイスとテーブルを置いて4人が座れる広さです。現在は、さらに大きな1,800mm版(最大2,000mm)も開発されています。
七ツ塚ファーマーズセンターを受託運営するNPO法人理事長の山本徹さん(写真右)は、「特に子どもに人気がある」といいます。以前から店舗前にイスとテーブルを置いていたそうですが、日よけに苦慮していたとのこと。テントは風に弱いため屋根の増設を考えていたところ、たまたまフォレストドームを知って導入が決まりました。「素朴な木の感じがほっとする。風が抜けて、木の香りがして、自然に溶け込む感じがいい。店舗利用者以外の方も自由に立ち寄ってください」とのことです。
フォレストドームは、公園やキャンプ場などの自然にも馴染みますが、建物の中や屋上にも設置できます。都会で森を感じる、そんな空間を手軽につくれるのが魅力です。
●開発者・北村淳さんが語る、フォレストドームの魅力と思い。(動画)
●山口多摩平ビルの屋上菜園に設置したフォレストドームの中から見た360°画像。
山口多摩平ビルの屋上菜園は、こちらをご覧ください。
フォレストドーム@山口多摩平ビル – Spherical Image – RICOH THETA
●フォレストドームが、グッドデザイン賞(GOOD DESIGN AWARD 2016)と、ウッドデザイン賞(JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2016)を受賞しました。
●製品名:フォレストドーム(FOREST DOME)
●開発:北村淳建築設計事務所
●価格:15万円から(仕様により異なる)
●この製品および施設の見学:可
●お問合せフォームを開く
取材時期:2016年3月 取材・執筆:下島 朗
動画追加:2016年5月 制作:Entrata.
360°画像追加:2016年10月 制作:Entrata.
受賞追記:2016年11月